うさみ日記

東京都日野市からまいりました宇佐見直人です。ITとかマーケとかの話や、勉強した話なんかをするよ。

大規模リニューアルプロジェクトの舞台裏 UX & Service Sketch #21というのに参加してきたよ。


大規模リニューアルプロジェクトの舞台裏 UX & Service Sketch #21 - connpass
というやつに参加して来ました。


radiko.jpのアプリリニューアルを担当した「パフォーマー」さん
・日経電子版のアプリリニューアルを担当した「インタラクションデザイナー」さん
・Backlogのリニューアルをしたプロダクトマネージャーさんとエンジニアさん
サンシャイン水族館のリニューアルを担当した次長さん
・パネルディスカッション&質疑応答
・ビールとピザとスパークリングワインと名刺交換
みたいなイベント。


たまにこういう勉強会みたいのに行くと
・知らない知識がドバドバ入ってきてためになる
・なんかやる気と自信に満ち満ちた人がいてこっちにそれが伝染する
ので、おすすめです。

ざっくりまとめると「コミュニケーション超大事」という話に落ちつくのか?

皆さんの話に共通してたのは、
「大規模になればなるほど関係者が増えるから
コミュニケーション超大事だよ」という話と、
「石橋の素材は叩いて叩いて叩いて選ぶ」
「利用者もいっぱいいるから、どんなリニューアルをどうやってするか、気を付けようね」
「何がゴールか、軸をぶらさない」
という話だと思う。


以上です!


で終わると、まとめすぎてアホみたいだね。
でも、大げさに言うのならばきっとそういうことなんだろう。

と思いつつ、こまごま書いとこう。
以下、長くなります。

radiko.jpのアプリリニューアルを担当したパフォーマーさん

84ken #SCHEMA (@84ken) | Twitter
この方。

パフォーマー

パフォーマーって何?というと、
「営業スキル/マインドを持ったプロジェクトマネージャー」みたいな人。
あるいは「調整役」って感じみたいです。


この方の言っていた
「作業者のつもりで予算や期間や無理難題に立ち向かうんじゃなくて、
営業スキルと営業マインドでプロジェクトマネージメントする。」
みたいな話が神ってた(一度使ってみたかった)。


大規模リニューアルプロジェクトに関係する人ってとっても多くて、
とくに会社を超えていろんな人が関わるようなプロジェクトって、
あっちの偉い人とかこっちの偉い人とそれぞれの部下とか、
ホニャララ協会とかホニャララ機構みたいなものも絡んで雁字搦め。

たくさんのピラミッドが砂漠にありまして

「組織のピラミッド構造」みたいな話があるけど、
あっちにクフ王のピラミッド、ジェセル王の、フェネル王のピラミッドがあって、
マヤ文明のピラミッドも聖帝十字陵もある。みたいな状況ですよ。
その中にいろんな役割の人がいる。


もちろん、その人たちとは別に利用者がいて、
利用者がイイ感じに使ってくれるものを作らないといけない。


そんな中で、
・決裁者と仲良くなる
・話す回数を多くとる
・無理難題には正攻法で立ち向かわず一つ上の視点で話す
ってのが大事。という話。


クリエイターマインドだけだと
「要件追加⇒徹夜追加!外注に謝る!」
みたいになっちゃうところを、
「要件追加⇒決裁者に何が一番したいことなのか聞く⇒最適解!」
みたいなことだよ、と。

仲良くなるレベルを見習わなければならん

またこの「仲良くなり方」がすごくて、
いっしょに飲みに行くくらいになるそうです。
すごい。そんな人がチームにいたらとてもありがたい。
ツテも使って関係構築したりもするらしい。


質疑の時間でも
「リニューアル成功のキーファクターは?」と聞かれて
ステークホルダーを早く察すること」
という話もされてました。


この辺実は、某ペパボのCSマネージャー氏が言っていた
「部下と飲みに行く」というコミュニケーションにも通じるね。

次は「作る前にどれだけ地雷をつぶすか」の話。

続きまして、 この方。
深津 貴之 / THE GUILD (@fladdict) | Twitter
日経電子版のリニューアルをどう進めたかのお話でした。

問題点、何?

「日経電子版は、コンテンツがいいのにそれをうまく使えてない。
 機能が増えすぎて破綻してる状態」
というのがスタートだったそうです。
ユーザー視点じゃなかったんだって。
だからまずは「どこがダメか」を伝えるところから始めたそうです。
それで切られるなら、そこまでだ、と。
ところがこれが実際にスタートしたわけですね。


ユーザー視点でのリニューアルを考えて、
「こういうのがあったらいいな」というのを並べて、
「この中でやれることをやろう」と、実行していったそうです。

日経電子版リリースまでの時間

じゃあどのくらいの期間でやったの?というと、
1ヶ月 リサーチ
4ヶ月 理想のプロトタイプ作成
1ヶ月 理想を現実に落とし込む作業
合わせて6ヶ月。私はこれ、長いと感じます。
が、こういう世界なんですよね。


プロトタイプを作るのも段階がある
(低精度⇒中精度⇒高精度)。
手書きのメモから始まって、実際に動くものを作ったりもしてる。
色々でてくるアイデアや可能性は片っ端から試す。
「指は届くか」をね。


他社のニュースアプリなんかも片っ端から評価する。
テスト会社やテストユーザーもどんどん使う。
ざっくりパクって終わり、みたいな雑なことをしないで、
緻密に緻密にトライアンドエラーする。


リリース後もPDCAをひたすら回す。
もう2年くらいやってるそうです。

とっても大事な「視点」の話

ユーザー視点。大事です。


まず最初に、発注した会社の偉い人に対して
「95%のユーザーが便利に使えるモノを作ります。
あなた方はマイノリティです。」
という話を含む『アプリデザイン10か条』を伝えているそうです。


なんの話かというと、
ユーザー視点って大事だよねーとかいいつつ、
なんかよくわかんない偉い人の発言で変わっちゃう。
というあるあるを回避してる。


これ、スバラシイ発明だと思う。


また、作業案件を受けるよりも、
ゴールに向けてのコンサル案件を受けて、
チームビルドもその中に入れるそうですよ。
依頼した人にも宿題を出して勉強してもらう。

んで、結果

SNSでのニュースシェア数1.5倍
だそうです。
スバラシイ。


お話の中で何度か
「博打は好きではないので」 とか「地雷を潰して…」という話をされてました。
リリース手前の段階で大丈夫と言えるところまでツメてあるんですね。
これぞ失敗できない大規模リニューアルの王道だ!って感じ。


質疑応答の中だと、
「マニアックな人と、一般的な意見のどっちを取り入れるか」という質問に、
「90〜95%の人の意見を取り入れて、1%が後。
でも例えばお金を生むのが1%なら別。
とはいえ、1%の人がお金を生むのは不健全だから、
ライトユーザーをミドルにするとか、ライトミドルから集めることを考える」
という話をしてたのも印象的でした。

続いて自社開発したもののリニューアルのお話

Toshitaka Agata (@agata) | Twitterさんとエンジニアの藤田さん。
Backlogを開発しているnulabさんですね。
すっごい昔に提案いただいたことのある会社さんだわ!


先の発表者2人は受託でやったわけですが、
こちらは自社で作ったもののリニューアル。
最初が「自分たちのプロジェクト管理ツール」だったのが、
公開から12年たって、今や世界中でたくさんの人に使われている。

なんでリニューアルしたのか

「継続的成長のための下地づくり」が目的だったそうです。


・UIの負債…となりにあるべきものが遠くにある
・技術的負債…古い技術に基づいていて新しいことができない
・運用上の負債
・などなど
があってリニューアルに踏み切ったそうです。
脱皮みたいなもんだね。
狭くて硬い殻を脱いで、
汎用性があって新しいことができるものに生まれ変わらせた。

時間と労力をかけてやったこと

当初は2名5ヶ月で見積もっていたのが、
5名で1年以上かけて2016/12/6のリニューアルにいたったそうです。
もちろん今もPDCAまわして改善しているところ。


やったことは
・画面すっきりイマドキUI=渋滞の解消
・今後も成長できるサービスに変身
・「仕事に楽しさを」・・・もっちりアイコン、「連打ビリティ」の高いいいねボタン、マスコットのゴリラ


なんというか、自分たちの作っているものへの愛情を感じるプレゼンでした。
でも自分達の愛を押し付けるのではなく、
ユーザーに愛されるものを作る。
アイドルのプロデュースでもしてるみたいな話だよね。

ベータリリースをしっかり

んで、ヌーラボさんの素晴らしいポイントが、
時間をかけてじっくりベータリリースをしたところ。


社内テストをしっかりして、
最初はためしたい人だけ
次にいつでも戻せるようにリリースしたり、
確信がもてないところはユーザーが使うのを待って調整したり。
いろいろ言われるのがツラかったそうですが、やはりそこはためになるし、
恐れていた批判もほぼこなかった。


当初のベータリリース一ヶ月後、
新UIを使う人が10%しかいないことに気づいて焦ったそうです。
ここでも仮説を立てて、一回っきりのダイアログを出したり、
古いものも使えるけどデフォルトを新しいほうにして
「古いのに戻す人はなんでか聞くアンケート」を入れたり。


この丁寧さ。
何も言わずに突然変えるMicr〇s〇ft(〇は伏字です)に教えてあげてほしいよね。
数値目標をしっかり持って、いいかげんにやらないことが大事。
というのがまとめの言葉でした。

そして、水族館のリニューアルの話

サンシャイン水族館行ったことある?
リニューアルしたの知ってる?


池袋にサンシャインができたころはアミューズメント施設なんて少なくて、
そこから数回リニューアルしてるんだけど、
今回のリニューアルは今までと違うんです。

何をリニューアルしたのか

水族館のリニューアルというと、
水槽を始めとした設備なんかをはじめとした
「ハード」のリニューアルかと思うけど、
それだけでなく「ソフト=働く人の気持ち」もリニューアルしたそうです。
スバラシイ。
具体的には「プロ視点からの脱却」。


このプレゼンをされた二見さんが
「水族館最近行った人。何をしに行きました?」という質問に私が答えたんですが
「家族がいるんで、こどもとの楽しい時間のために。
 『あー、今日楽しかったねー』というために行きます」みたいな返事をした。
そりゃそうでしょ。楽しみに行くでしょ。


ところが、「日本動物園水族館協会」の定義としては、 水族館や動物園は
「教育、研究、保護」のためのもので、「楽しみ」がメインではないそうです。
そこが間違ってるから、ビルの上という制限もある中で
「お客様にどんな気持ちになって欲しいか」から考えたそうです。


飼育員という言葉

この二見さん、以前は飼育員の仕事をしていたそうです。
でもこの「飼育員」という言葉は大嫌いなんだって。
飼育じゃなくて展示をするのが仕事だから。


んで、リニューアルするわけですが、
リニューアルに関わるチームは
・設備
・ホスピタリティ
・物販と飲食
の3チーム。
合計人数は130人。
みんなが参加意識を持って、目的を理解して。


社内にホワイトボードを置いてそこに問を書く。例えば
「あなたはどんな階段なら登りたい?」
みんながそこにアイデアのフセンを貼っていって、
一つ一つのアイデアから答えを導いていく。


「この人を核にすればここは育つ」というのを見極めて、
その人をフォローするシステムを作る。
それを楽しいと思う人たちによって、
以前は正しいと思われていたことを覆していく。

呪いの水族館。

この夏に「呪いの水族館」というお化け屋敷もやったらしい。
ポロッと出たアイデアを本当にやる。という組織。いいなあと思った。
この「ITの人がUXのリニューアルを云々」みたいなイベントに
二見さんが来て話をしてくれたことも、組織の柔軟性を感じるよね。


この二見さん。
プロジェクターにはGoogle画像検索の検索結果くらいしか表示せず、
淡々と、かつかなりおもしろくお話されてました。
これが「飼育じゃなくて展示をしている人のスキル」だったんだなー。
と今にして思う。
話がむちゃくちゃうまいんですよ。


ちなみに、交流会の途中で二見さんと話をすることができて、
「なんか共有するための道具とか使ってますー?」と聞いたところ
「一応サイボウズ使ってますけど、そっちよりも面と向かって話をしたり、
 みんな同じフロアにいるので声出してます。
 共有もできるし」という話に超納得した。



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