うさみ日記

東京都日野市からまいりました宇佐見直人です。ITとかマーケとかの話や、勉強した話なんかをするよ。

ラーメン屋の店主とフルスタックエンジニアの話。

そろそろ相模原市に住んでいた頃の話をしておこう。 - うさみ日記という日記にも書いたんだけど、
2000年から2005年くらいの間、神奈川県の相模原市というところに住んでいた。


そのころの相模原には
【閉店】肥後っ子 大石家 (ひごっこ おおいしや) - 矢部/ラーメン [食べログ]
というラーメン屋があった。

大石家

まずこのお店、ラーメンがむちゃくちゃうまかった。
店名に「家」は付くけど家系じゃなくて、
スタンダードを突き詰めたような細ストレート麺の熊本とんこつラーメン。


パンチ一発に全身全霊をかけて鍛え続けた格闘家みたいな凄みがあった。
臭みなくうまみ深いスープとかみごたえ最高の麺。
最後にスライスチーズを一枚乗せるのだけど、
これが飛び道具と見せかけてさらにむっちゃっくっちゃっうまかった。


それを作る店主が変わった人で、
客にガンガン話しかけてきたり、週休三日(火水木)だったり時として不定休だったり、
ラーメン一杯の注文で英会話を無料で教えてくれたり、
久しぶりに行ったら長期休暇を取ってニューヨークに行ったりしているような人だった。


ラーメンのうまさや店主の自由さも異常なんだけど、
「ラーメンの作り方ゼロから教えます。」
というような内容の小さいポップがカウンターの上にあったことも衝撃だった。
金額は書いてあったか覚えていない、でも、聞いたらたしか50万円と言っていた。


その内容を聞くと、一か月だか数か月だかの期間で
・店で出しているままのスープ作りの技術、たれ作りの技術
製麺所を出せるレベルの製麺技術
・具の作り方
・店の出し方、まわし方
といった、ラーメン屋をゼロから始められるスキルをこの店で教える、ということだった。


卒業していった弟子が何人もいて、いろんなところでがんばってる、とも言っていた。
これは本当のことで、今でも大石家で修行した人たちがいろんなところでお店をやっている。
「大石家 弟子」と検索すると、弟子のみなさんの情報が出てくる。

「1から作る」話

お金さえ用意すれば、1からラーメンを作る技術を伝えてくれていた。
もちろんこのお店で麺やスープを1から作っていた。


さて、ここでクエスチョンでーす。


麺を自分の店で作っているところって、少ないよね?
自分で麺を作らないのって、邪道?どう思う?


また、最近ラーメン業界では
「あなたが1から作ってるスープを、コストもクォリティも均一に作ります。」という、
スープ作りをアウトソーシングできる会社さんができ始めている。
これって、邪道?どう思う?


2軒のラーメン屋さんが並んでて、
片方はおいしくなくて汚くて、
片方はおいしくて清潔。
もう一度行きたいのはどっち?
アウトソーシングしているかどうかは判断基準にならない。


大多数が美味しくて清潔なほうにまた行く。
美味しいという基準は人それぞれだけどね。


なんとなく「1から作れる人」のほうがおいしいものを作れそうな感じはするけど、
そこは別に「安くてうまくてはやけりゃいい」。

アルバイトしていたラーメン屋

ラーメンといえば、
昔ラーメン屋でアルバイトをしていたことがある。
そのお店では、麺は製麺所から買っていたけど、
スープは鶏がらととんこつの二種類を店で炊いていた。


そこの店長の浦沢さんは休みの日の朝でも店に来て、
大きな釜でとんこつスープを煮出して、
鶏がらスープも毎朝作って、店でラーメンや中華料理を作っていた。
努力に伴わず、客は減り、店長が変わって、店はその後なくなった。


1から作れる技術はあったし、
腕は確かだったけど、
店の場所と運営方法がまずかった。
バイト中なのに、ずーっと冬季オリンピックを見てた日を覚えてる。

フルスタックエンジニア

話は変わって、システムとかWebの業界では
フルスタックエンジニア」と言う言葉がある。
詳しくは
35歳定年説より怖いフルスタックエンジニアしか生残れない未来とは - paiza開発日誌
を読めばわかるので、興味のある人はぜひ読んで!


ざっくり言うと「実用に耐えうるWebサービスを1人で1から作れる人」のこと。
ハードウェアを用意して、その上に入れるミドルウェア、その上で動くソフトウェア(プログラム)を、
全部1人で作って、世にリリースできるような人。


昔は一部の人だけができることだったんだけど、
Webやシステムの技術革新と、
偉大なる先人達が用意した「近道ツール」みたいなものができているので、
後進の人々はその近道を通って目的地にたどり着けるようになった。


「近道」と言うのは、
サーバーや回線側だと「もう使えるようになってます!」みたいなサービスのこと。
ミドルウェア一式をコマンド一発ですべてインストールするような便利ツールもあるし、
CakePHPRuby on Railsみたいなテンプレートエンジンもある。
デザインだって簡単に反映できるテンプレートやbootstrapみたいなものがある。


ラーメン店で言うと、
居抜き(什器備品が一式ある状態で不動産を借りること)の店舗を借りて、
製麺所から麺を買い、アウトソーシングのスープで店を始められるような状態が今のIT業界。
「もう厨房も食器も麺もスープもありますよ!」という状態からラーメン屋を作れることになる。


この「簡単に素晴らしいものができる技術」というのには賛否両論ある。
「それだけで知ったつもりになっちゃ物事の本質がわからないし、
 ある程度のものは作れてもある程度のものしか作れない」と言う人もいるし、
「メジャーなサービスでも使われてるし、
 安定感もあるしいいじゃない」
と言う人もいる。

答えの無いような話だけど

手抜きしてても美味しければ美味しいし、
手間暇かけてもマズけりゃマズい。
うまくても場所や店が悪ければ人がこなくて店は潰れる。
競合だってわんさかいる。


スープや麺は送られてくるものだ、と思っていたら、
仕入先が値上げしたり、突然つぶれたりしたら店を維持できなくなるかもしれない。
新メニューの開発をしようとしても、どこかにあるようなありふれた物しか作れないかもしれない。
限界までコストを下げて迫ってくる競合が出てきたらあっさり負けるかもしれない。


一回でも基礎から作ってれば意外な応用が利くのにね。
とはいえ、食べ物屋なら作ってるものが目の前にあるからいろんなことに気づく。
それに対して、
システム関係は知らない技術は気をつけないと入ってこないのが怖い。


気を付けておきたいことは
・近道だけだとなにか起きたら対応しにくいし、新しいこともはじめにくい
・1からやったことがあると、つぶしがきく
・立ち位置と方向性を意識しないと、まいごになる
ということなんだと思う。

エンジニアリングを続けるエンジニア

「勝ち続ける意志力」という本を先日読んだ。
もっとも長く賞金を稼ぎ続けているプロゲーマーの梅原大悟さんという人の本。
一回勝つなら定石でもズルでもいいけど、
勝ち続けるために、定石や勝ちパターンを捨てるのだと書いてあった。


すごいことだと思った。
楽なパターンを捨てて全ての方法を探す。
行き止まりまで歩いて引き返すことを繰り返す。
近道も遠回りも全部網羅するし、
新しいゲームが出たら1から始めて、勝つ。


もちろん、
全てのインフラと全てのプログラム言語に精通し、
あらゆる業界業種に詳しいエンジニアなんて居ないので、
ある程度「自分の土俵」を決めて成長するのが前提。


立ち位置と方向性を決める。
フグを捌き続ける職人の道もあるし、
オールドスクールなプログラム言語で逃げ切る方法もあるかもしれない。
新味開発のために食材を探し続ける人もいるだろうし、
業種と言語の組み合わせでユニークさを出す手もある。
どの方法がいつまで通用するかはまだわからない。


でも、
なんとなく今の場所にいて、
なんとなく流されるというのは、
避けたいもんだよね。


まあ何が言いたいかというと、
大石家のラーメンが二度と食べられないのが悲しい。
また食べたい。
って話ですたしか。



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